春にして君を離れ:
~死ななくてもアガサ・クリスティ~

2014年の春前に読んだアガサ・クリスティの春にして君を離れ について。偶然存在を知って読んだ本ですが、結論を言うと面白くて読むのが止まらなくなりました。

アガサ・クリスティがアガサ・クリスティじゃない名義で書いた本で、ネタバレになるかもしれませんが誰も死にません。ただ回想の中で主人公が自己嫌悪や自己不信の波に飲み込まれるさまはサスペンスっぽいかもしれません。

バグダッドからの帰り道での主人公の回想がメインで、帰り道に昔の同級生に会ったことから話が始まります。その同級生は学校のアイドル的存在で憧れの的だったものの今となっては惨めで哀れに見え、自分はああならくてよかったとも思い始める。

その後汽車の遅れから足止めを喰らうも、何もせず過ごす日などなかったのでいい機会だと思い砂漠の中を歩き昔のことを思い出す。

法律事務所で数年働いた夫が農業をやりたいと言い出したのを説得して弁護士を続けさせたこと、娘たちの友達付き合いが気に入らずに”まともな”友達とだけ付き合わせたこと、等々。

全部自分がやったことは正しかったはず。おかげで自分も家族も幸せで…

というところに「本当にそうだろうか?」という疑念が湧き始めちゃう話。

本当に自分がやったことは他の人のためになっていたのか?独りよがりの自己満足だったのではないだろうか?考え始めたらそれまでの人生を全否定することになりそうなことまで考えて考えてしまう話。

その描写に引き込まれて一気に読んでしまいました。

ハウスという医療ドラマでこの本のようなオチが何回もありましたがアガサ・クリスティの影響なのでしょうか。

20代半ばで読めて良かった思います。ただ60を過ぎてからまた読んだら主人公同様自己不信や自己嫌悪に陥ってしまうのか確かめたいような気もします。

あと砂漠での回想中にふと「あれ?なんでこんなことを考えているんだっけ?」とか「あれ?何を考えていたんだっけ?」となる描写がありましたがそれがすごくリアルだと思いました。

旅先で幸せになる系統の本ではないですがこれと荒野へは旅人に勧めたいです。

旅先で何かに気付く系統の本があれば読もう。

でもそれ以上に自分で旅に出て何かに気付こう。