2013年初頭に読んだPredictably Irrational: The Hidden Forces that Shape Our Decisions という本の紹介。著者Dan ArielyのTedTalkは何度か見たことがあり面白そうな本だと思っていたのですが読んでみたら期待以上にいい本でした。
本の内容を一言で表すとしたら人はそんなに合理的じゃないということ。
人は合理的判断に基づき意思決定する、という経済学の大前提がどうかしてると思いながら経済学を勉強した身からしたらこれはすごく良いスタンスです。
全体を通して面白い本ですがその中でも特に覚えておこうと思ったところをいくつか書いておきます。
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1. 相対的な意思決定基準
新聞の定期購読をする時に次の選択肢が与えられた場合、どれを選ぶでしょうか?
1. 電子版:$59
2. 紙版:$129
3. 紙と電子版の両方:$129
この選択肢が与えられた時、購入件数は3>1>2の順になります。
ここで、3の選択肢というのは「2+電子版」なのですが、両者の価格が同じなので2を選ぶ人はまずいないはずです。
よって2の選択肢を取り除いた次の選択肢においても3と1の選好関係は変わらないはずです。
(3>>1>>2という選好性があれば2を取り除いても3>>1となるはず)
1. 電子版:$59
2. 紙版:$129
3. 紙と電子版の両方:$129
ところがこの場合、1を選択する人の方が多くなってしまいます。
一見劣って見えるような選択肢でも、それを省くことで意思決定が影響を受けます。2が3に明らかに劣ることで3という選択肢が魅力的に映るからです。
これは価格設定とか商品のラインアップを決める時に知ってると役に立ちそうです。
2. その他
- 満足具合の基準も相対的
→ 自分の給与に満足するかどうかは兄弟姉妹やその配偶者のそれよりも多いかどうかに依存
- 他人の選択の影響
→ 文化による違いもあるが飲食店での他人の注文を避けたり他人の注文に合わせたりする傾向
→ その結果自分の好きでないものを頼みやすくなる
- 曖昧な罪悪感
→ 職場にあるペンを家に持ち帰るのは躊躇しないが会社の金を盗んでペンを買うのは躊躇
→ ルームメイトのコーラは抵抗なく勝手に飲むが1ドル札が机に置いてある場合は手をつけない
- 冷静でない時の判断
→ 性的興奮状態にある場合、獣姦や倫理的問題のある行為を高く評価
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等々。自分では理由をつけて合理的に行動してるつもりでも周囲の状況や比較対象によって影響を受けることがあってそのバイアスは避けられないもののようです。
それに加えて理由の後付けや自己正当化バイアスなんていう厄介なモノもあり、理由を元に行動したと思っていても実際は行動の後にそれに沿う理由を無意識に用意したなんてこともあるみたいです。
とはいえそのようなバイアスの存在を知っているのと知らないのとでは、結果的に同じ行動を取ってしまったとしてもそれを省みる際に違ってくるのでしょう。それに単純に面白いですしこういう研究についてはもっと知りたい。
なんと言ってもこの人は行動経済学という難しそうに聞こえる学問をポップにわかりやすい例を冗談を交えながら説明するのでものすごく読みやすいです。
別の著者になりますが脳科学方面から意思決定について書いた本を買ったのでそのうち読むつもりです。
今読んでる中国共産党の本はしばらく格闘することになりそう。