映画イントゥ・ザ・ワイルドの原作
これもまた昔に読んだ本。前回の春にして君を離れ:~死ななくてもアガサ・クリスティ~と同時期2014年初頭に読んだ本。両者共に旅先で素敵な思いをする話ではないのにもかかわらず旅に出たままどこかに行ってしまおうかなと思わされた本です。
本作との出会いとあらすじ
大学卒業後に失踪し2年後にアラスカで死体となって発見された若者クリス・マッカンドレスの空白の2年間を描いたノンフィクション。
初見はアメリカ留学中の2010年に友達と見た本作の映画イントゥ・ザ・ワイルド。その友達とスイスで会った時にも見たので思い入れのある映画です。
映画の方では自然の綺麗さに目が行きましたが本の方では主人公の考え方や物の見方、旅先で会った人とのやりとりがメインに描かれています。
個人的にグッと来たのはクリスが旅先で会った81歳の男性に書いた手紙。
“多くの人々は恵まれない環境で暮らし、いまだにその状況を自ら率先して変えようとしていません。彼らは安全で、画一的で、保守的な生活に慣らされているからです。それらは唯一無二の心の安らぎであるかのように見えるかもしれませんが、…(中略)…人生からもっと多くの物を得たければ、…(中略)…あちこち動きまわり、放浪し、毎日毎日、水平線をあらたなものにしていくのです。…(中略)…ありとあらゆること、なんにでも、ぼくたちは楽しみを見いだせるのです。習慣的なライフスタイルに逆らって、型にはまらない生き方をするには、勇気が必要です。…(中略)…ためらったり、あるいは、自分に言い訳するのを許さないでください。ただ、飛び出して、実行するだけでいいのです。飛び出して、実行するだけで。そうすれば、ほんとうによかったと心から思えるでしょう…“
荒野へ (集英社文庫)
物静かであまり人が好きではないとはいえ旅先で会う人の心を惹きつける様な人だったのだろうなと感じました。
マメに手紙のやりとりなんかもしてたようですし。
案の定自分もそんな旅人には惹かれてしまいますし。
1年半以上北米を放浪した後、アラスカへ。そこで自給自足の生活をし、数カ月後死体で発見されます。
この流れを調査したところ、生活の拠点としていた場所の近くには大きな川があり、アラスカに着いたばかりの頃は水かさがなく行き来できていたものの夏になって氷が溶けて水かさが増したことで帰れなくなってしまったのではないかと。
マッカンドレスの死で皮肉だと思ったのは、死体と一緒に見つかった本の”幸福は分かちあえたものだけが本物である“という部分に印が付けてあったことから、アラスカでの厭世的な生活を終えて文明の下に戻ろうとしていたのではないかと推測されていること。
帰ろうとした時期と川の増水の時期が重なったことで帰れなくなり、植物の毒に当たり衰弱死。
生活していた場所の近くに研究所があったのでそれに気付けば助かることもできたはず。
あと死後の家族の話も生々しく載っていましたが、死ぬといろんな人に迷惑がかかるので気を付けないといけないなと。
人が死んだという事実があり、その人が死ぬまでの道のりを追うという本なので決して明るいものではありませんが、作者が聞き取りをしたり調べたことを読んでいたら旅行がしたくなりました。
ちなみに上で手紙をもらった81歳の人はその後家を売り旅に出たようです。どうでもいい話ですが自分も幸運なことにこの本を読んだ2014年に6週間程旅に出ることができました。
年を取ってから読んでも冷めた目で見るかもどかしくなるかしかないと思うので若い内に読むのがいい本だなと思います。
他の人ももっと旅に出ればいいのに。